大判例

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最高裁判所第三小法廷 平成8年(行ツ)67号 判決

上告人

堀内由美子

外七七名

右上告人ら(森川金寿を除く)訴訟代理人弁護士

森川金寿

右上告人ら訴訟代理人弁護士

南典男

右上告人ら(森川文人を除く)訴訟代理人弁護士

森川文人

右上告人ら訴訟代理人弁護士

林和男

山内一浩

瀬野俊之

榎本信行

君和田伸仁

市川清文

澤藤統一郎

森山満

名嶋聰郎

大谷直

尾林芳匡

安東宏三

大槻厚志

植竹和弘

田中昭人

徳岡宏一朗

小山達也

坂勇一郎

武藤元

被上告人

東京都新宿区長小野田隆

被上告人

東京都新宿区助役

髙橋和雄

被上告人

東京都新宿区収入役

吉野道雄

右被上告人ら指定代理人

内山忠明

高橋工

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人森川金寿、同南典男、同森川文人、同林和男、同山内一浩の上告理由一及び二について

本件は、東京都新宿区の住民である上告人らが、地方自治法(以下「法」という。)二四二条の二第一項一号の規定に基づき、本件人骨処理費の支出等の差止めを求める住民訴訟である。

法二四二条の二第一項一号の規定による住民訴訟の制度は、普通地方公共団体の執行機関又は職員による法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為(以下「当該行為」という。)を予防するため、一定の要件の下に、住民に対し当該行為の全部又は一部の事前の差止めを裁判所に請求する権能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものである。このような事前の差止請求の趣旨及び目的に照らすと、法二四二条の二第一項ただし書にいう「回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合」とは、当該行為によって普通地方公共団体が事後的に回復することが困難な財産的損害を被るおそれがある場合をいうものと解するのが相当である。

本件においては、遺族から本件人骨の焼却につき損害賠償請求訴訟を提起された場合の応訴費用の負担等が差止請求の対象である本件人骨処理費の支出と相当因果関係を有するものでないことは明らかであり、原審が適法に確定したところによると、本件人骨処理費は四四九万五〇〇〇円であり、法二四二条の二第一項四号所定の訴訟によって事後的に損害賠償請求等をすることを妨げる事情もないというのであるから、本件訴えが同項ただし書にいう「回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合」に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

同三について

法二四二条の二第一項ただし書は、住民訴訟を提起することができる者及び場合を定めた本文に続いて「ただし、第一号の請求は、当該行為により普通地方公共団体に回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合に限る」と定め、当該行為の事前差止めを請求することができる場合を限定している。そして、同項所定の住民訴訟は、自己の法律上の利益にかかわらない普通地方公共団体の住民という資格で特に法によって出訴することが認められている民衆訴訟の一種であり、このうち同項一号所定の差止請求訴訟は、事後的な請求によっては目的を達成することができない場合に限って設けられた訴訟類型とみられる。これらにかんがみると、回復の困難な損害を生ずるおそれがないにもかかわらず提起された差止請求訴訟は、法により特に出訴が認められた住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法といわざるを得ない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官奥田昌道 裁判官千種秀夫 裁判官元原利文 裁判官金谷利廣)

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